製造や品質管理の現場では、これまで問題なく使えていた金属部品に、ある日、黒ずみや変色が見つかることがあります。

「材料は変えていない」「工程もいつもどおり」のつもりでも、納品前の検査や取引先からの連絡で初めて異常に気づくと、何が原因なのか、どこから調べればよいのか迷うものです。

しかも、「突然変色した」という言葉は、変色そのものが短時間で起きたことを意味するとは限りません。

変化が少しずつ進み、検査や開梱の際に初めて見つかった可能性もあります。

この記事では、金属部品の変色が見つかったときに社内で確認したいことと、蛍光X線分析(XRF)でどのような手がかりを得られるのかを解説します。

変色は「原因」ではなく、表面に現れたサイン

黒、茶、白、虹色など、変色の見え方はさまざまです。

しかし、色だけを見て原因を一つに決めることはできません。

金属表面で起きた反応や腐食によって色が変わっている場合もあれば、油分や粉末などの付着物、あるいはめっき・表面処理の状態が関係している場合もあります。

同じような黒ずみに見えても、表面で起きていることが同じとは限らないのです。

そのため、最初から「材料不良だ」「保管中の湿気が原因だ」などと決めつけるのではなく、変色が見つかった時点の状態と、それまでの経緯を切り分けて確認することが大切です。

まず確認したい5つのポイント

原因を探る前に、次の5点を社内で整理しておくと、あとの調査が進めやすくなります。

1. いつ、どの工程で見つかったか

変色に気づいた日時だけでなく、最後に正常な状態を確認したのはいつかも振り返ります。

加工直後は正常だったのか、洗浄・乾燥後に現れたのか、梱包を開けたときに見つかったのか、使用後に生じたのかによって、確認すべき範囲が変わります。

2. どこに、どの程度発生しているか

部品全体か一部分か、接触面・端部・くぼみなど特定の位置に偏っているかを確認します。

あわせて、同じロットの全数に出ているのか、一部だけなのか、別ロットにも見られるのかを整理しましょう。

変色箇所の位置と広がりが分かるように、部品全体の写真と、変色部を拡大した写真の両方を残しておきましょう。

写真で記録しておくことで、発生範囲を後から確認しやすくなり、社内で状況を共有・整理する際にも役立ちます。

3. 材料・工程・仕入れに変更がなかったか

次に、材料の仕入れ先やロット、加工条件、めっき・表面処理、洗浄・乾燥方法などに変更がなかったかを確認します。

正式な工程変更がなくても、洗浄剤の銘柄や濃度、設備のメンテナンス時期、作業場所、委託先など、周辺条件が変わっていることがあります。

「いつもどおり」という前提をいったん外し、小さな変更も含めて時系列で並べることが重要です。

4. 保管・梱包・使用環境に違いがなかったか

温度や湿度、水分、薬品、保管期間、梱包材など、製造後の環境も確認します。

製品同士や異種金属との接触、作業時に使用した油剤・手袋・治具など、表面に触れたものも手がかりになる場合があります。

材料の分析で差が見つかっても、その差がどの工程や環境から生じたかまで、分析結果だけで断定できるとは限りません。

現場の記録は、測定結果を原因候補へ結びつけるために必要な情報です。

5. 比較できるものが残っているか

変色品だけでなく、同じ製品の正常部、変色していない同ロット品、別ロット品、過去品などが残っているかを確認します。

比較用の良品があれば、変色品とできるだけ同じ箇所を同じ条件で測定し、「変色品だけに検出される元素」や「特定元素の増減」を直接比較できます。

一方、良品がない場合も、同じ製品の正常部や別ロット品、過去品などを基準にできますが、製造時期や表面状態といった条件差を考慮する必要があり、評価の難易度は上がります。

変色部を磨いたり洗ったりする前に相談する

変色が見つかると、汚れかどうかを確かめるために拭いたり、研磨剤で磨いたりしたくなるかもしれません。

しかし、変色部や付着物そのものを調べたい場合、拭き取りや研磨によって、表面の付着物や変色に関係する成分まで取り除いてしまい、分析の手がかりが失われることがあります。

分析を検討している場合は、まず製品全体と変色部を拡大した写真を残し、変色品と正常品を混同しないよう識別して保管したうえで、手を加える前に分析機関へ相談すると、調査したい状態のまま調べやすくなります。

すでに拭き取りや洗浄をした場合は、使用した洗浄剤や方法も伝えましょう。

にじや分析ラボへ試料を送る前に、まずは写真と不具合の状況をお知らせください。 ご相談内容を確認したうえで、試料の送付方法をご案内します。

XRFでは、正常部と変色部の「元素の差」を調べる

蛍光X線分析(XRF)は、試料にX線を照射し、そこから発生する蛍光X線を測ることで、含まれる元素を調べる方法です。

にじや分析ラボの不具合・原因調査では、変色部だけを見るのではなく、正常部・正常品・付着物・周辺部など、比較する位置を設計して測定します。

たとえば、変色部だけで本来の部品にはない元素が検出された場合は、外部からの付着物や表面生成物が関係している可能性を検討できます。

正常部と変色部で、母材やめっき・表面処理に関係する元素の傾向が異なれば、材料や表面層の違いを調べる手がかりになります。

島津製作所のEDX-7200アプリケーションでも、樹脂成形品に付着した異物について、異物部と正常部のプロファイルを重ね合わせた比較例が紹介されています。

また、照射径を試料に合わせて絞ることで、周辺材料の影響を低減できると説明されています。

変色調査でも、変色部だけの測定結果を見るのではなく、正常部との違いを確認することが、検討すべき範囲を絞る手がかりになります。

(参考・参照)
島津製作所「EDX-7200 アプリケーション」

実測例|金属光沢が残る品と黒ずんだ品を比較

製造部品の事例ではありませんが、正常な外観の試料と変色した試料を比較する考え方を示す実測例があります。

にじや分析ラボでは、同じ種類の稲100円銀貨について、金属光沢が残る試料Aと黒ずみが生じた試料Bを、分析径1mmで各3箇所測定しました。

3点平均の硫黄(S)は、光沢品Aが0.367%、黒ずみ品Bが5.165%でした。

黒ずみ品で硫黄が多く検出されたことは、黒ずみとの関係を検討するうえでの手がかりになります。

ただし、XRFで確認できるのは「硫黄という元素が多い」という情報までです。

この結果だけで、特定の化合物や、硫黄がどこから来たのかを断定することはできません。

正常側と変色側を同じ条件で複数箇所測り、再現する差があるかを見ることで、次に検討すべき範囲を絞っていきます。

硫黄が多いという結果ひとつで原因を決めるのではなく、材料そのものだけでなく、表面で起きた変化や、保管・使用時の環境まで含めて、検討すべき候補として扱うようにしています。

(参考・参照)
にじや分析ラボ「分析結果(実測データ)No.007」

元素の差が出なければ、材料に問題はない?

正常部と変色部で明確な元素差が出なかったとしても、「異常がない」「材料は原因ではない」とは断定できません。

XRFで確認できるのは主に元素組成です。

装置メーカーの島津製作所も、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)などはEDXで検出できない元素として挙げています。

また、温度、湿度、時間、薬品との接触など、元素組成の比較だけでは捉えきれない条件が変色に関係している場合もあります。

反対に、正常部と変色部で元素の差が確認されても、その元素差がそのまま変色原因とは限りません。

XRFの結果と、製造条件、材料ロット、保管・使用環境などの情報を組み合わせ、必要に応じて別の分析方法や追加調査を検討します。

(参考・参照)
島津製作所「よくあるご質問(FAQ)EDXで検出できない元素を多く含む試料の分析」

相談時に伝えたい情報

にじや分析ラボへ相談する際は、分かる範囲で次の情報を用意しておくと、調査内容を整理しやすくなります。

なかでも、いつ・どの工程で見つかったか、発生した数量やロット、変色の位置、そして「いつもどおり」のはずの工程や環境に変わった点がなかったかは、調査の方向を早く定める手がかりになります。

写真は、製品全体と変色部の拡大に加えて、正常部との違いが分かるものがあると助かります。変色に向きや偏りがあるときは、表裏や側面など複数の方向から撮っていただけると、状況をつかみやすくなります。

  • 部品・製品の材質、用途、表面処理
  • 変色に気づいた時期と、最後に正常だった時期
  • 変色が見つかった工程や使用状況
  • 発生した位置、範囲、数量、ロット
  • 材料、仕入れ先、加工、洗浄、乾燥、梱包、保管条件の変更点
  • 変色品に対して行った拭き取り・洗浄などの処置
  • 比較できる正常品、別ロット品、過去品の有無
  • 製品全体と変色部の写真、図面、仕様書、過去の分析結果
  • 分析によって何を確認し、どのような判断に使いたいのか

分析方法をお客様自身で決める必要はありません。

まずは「何が変色したのか」「いつ、どのような状態で見つかったのか」「何を知りたいのか」を共有してください。

試料の状態や目的に応じて、必要な測定箇所と分析内容を整理します。

下記のお問い合わせフォームもしくはLINEから、お気軽にお問い合わせください。

にじや分析ラボ「分析サービス」

分析サービス|元素分析・材質評価・膜厚・RoHS・比較分析・原因調査

ANALYSIS SERVICES 分析サービス 「何が含まれているのか知りたい」 「この材料が何なのか確認したい」 「めっきや膜厚を調べたい」 「RoHS・有害元素を確認したい」 「以前の製品と何か違う」 「不具合の原 […]

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  にじや質店(東京都青梅市野上町)
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    1998年創業・鑑定歴27年以上のベテランが常駐・取引実績6万件以上
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投稿者プロフィール

佐々木 英明
佐々木 英明
にじや分析ラボ 分析担当

株式会社クリエイティブファクトリー代表取締役。
にじや分析ラボにて、島津製作所 EDX-7200を中心とした蛍光X線分析(XRF)による材料分析・元素分析・材質評価に取り組んでいます。

「材質が分からない」
「仕入れた部品が以前と違う」
「良品と不良品の違いを調べたい」
「めっきや表面処理を確認したい」
「不具合が発生したが、何を調べればよいか分からない」

こうした中小企業・小規模事業者が抱える材料・品質・調達・不具合などの課題に対し、分析を問題解決に活用することを目指しています。

「分析設備と分析担当者を、必要なときだけ。」

社内に高額な分析設備や専任の分析担当者を置くことが難しい企業のための「外部分析室」として、分析方法が決まっていない段階からご相談いただける体制づくりを進めています。

■所属
・株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
・にじや分析ラボ 分析担当

■保有資格
・第一級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店開業
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや分析ラボ開設

■分析・技術分野
・蛍光X線分析(XRF)
・元素分析
・材質評価
・製品・部品の比較分析
・めっき・表面分析
・膜厚分析
・RoHSスクリーニング
・不具合・原因調査
・サイレントチェンジ調査

■主な分析・測定機器
・島津製作所 EDX-7200
・SPECTRO SCOUT
・VANTA Core V2CA
・SIGMASCOPE GOLD B/C
・超音波厚さ計 45MG
・実体顕微鏡/デジタルマイクロスコープ

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