
海外から仕入れた部品や材料の安全性を確認したい
海外から部品、樹脂、金属材料などを仕入れている企業では、「鉛やカドミウムなどの有害物質が含まれていないか」という不安を感じることがあります。
仕入先から「問題ありません」「規制には対応しています」と説明されていても、具体的な根拠となる書類や分析データがなければ、そのまま信じてよいのか迷いますよね。
とくに、仕入れた部品を組み込んだ製品を海外へ輸出する場合や、取引先からRoHS(ローズ)などへの対応を求められている場合は、部品や材料を受け入れる段階で確認できる体制を整えておくことが大切です。
とは言っても、大企業のように専門の検査部門や分析装置を用意するのは、中小企業にとって簡単ではありません。そこで役立つのが、必要な部品だけを対象にした、段階的な確認です。
なぜ海外調達品の有害物質が心配になるのか
国や地域によって、化学物質に対する規制や管理方法は異なります。日本で一般的に使われている材料であっても、輸出先の規制や取引先の基準では、別の確認を求められることがあります。
また、同じ製品名や型番であっても、製造工場、使用材料、製造時期、ロットが変わることで、含まれる元素や材料構成に差が生じます。書類上は問題がないことになっていても、実際に納入された部品が以前のものと同じとは限りません。
もちろん、書類がそろっているからといって、その部品に必ず問題があるわけではありませんが、重要な部品については、実物を確認することでより安心して受け入れられます。
まずは仕入先の資料を確認する
部品や材料を受け入れる際は、まず仕入先から提供されている資料を確認します。たとえば次のような資料です。
- 有害物質不使用証明書
- RoHS適合証明書
- 含有物質の分析データ
- 部品や材料の成分表
- グリーン調達に関する回答書
資料がそろっていれば、社内の品質管理や取引先への説明に利用できます。ただし、書類の有無だけでなく、次の点も確認します。
- どの製品や部品を対象としているか
- どの物質を確認しているか
- 現在の製品やロットに適用できるか
- 分析結果がいつのものか
- 取引先が求める基準を満たしているか
以前のロットについて発行された証明書が、現在納入された製品にもそのまま適用できるとは限りません。仕様変更や製造工場の変更がないかも、あわせて確認してください。

資料だけで判断できないときはスクリーニングを行う
仕入先から資料が提供されない場合や、資料の内容だけでは不安が残る場合は、部品や材料を受け入れる際に、実物を確認する方法があります。
その一つが、蛍光X線分析によるスクリーニングです。スクリーニングとは、対象物質が含まれている可能性があるかを、まず大まかにふるい分ける確認方法です。
にじや分析ラボでは、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、クロム(Cr)、臭素(Br)、塩素(Cl)、アンチモン(Sb)などの有害元素のスクリーニング分析を行っています。
蛍光X線分析は、製品を大きく壊さずに測定できるため、納入された部品や材料の状態を保ったまま、対象元素の含有状況を確認できます。
すべての部品を毎回詳しく分析するのではなく、まずはリスクが高そうな部品や、資料が不足している部品を選んで確認する方法が現実的です。
たとえば、新規の海外仕入先から初めて入荷した部品、仕入先からRoHS関連の資料や分析データが出てこない部品、仕入先・製造工場・材料・ロットが変更された部品、過去に問題があった部品などを優先します。
継続して仕入れている部品でも、正常だった過去ロットを基準として新しいロットと同じ条件で比較しておくと、材料が知らないうちに変わる、いわゆるサイレントチェンジの兆候に気づく手がかりになります。
受入検査として続けていくなら、「新規仕入先」「ロット変更」「製造工場変更」「資料不足」といった、自社で測定対象を決める基準をあらかじめ作っておくと、運用が続けやすくなります。大事なのは全品を完璧に分析することではなく、自社のリスクに応じて受入確認のルールを決めることです。

(参考)
東京都立産業技術研究センター「RoHS FAQ(スクリーニング分析)」
蛍光X線分析で分かること、分からないこと
蛍光X線分析で確認できるのは、主に元素の種類や含有の状況です。鉛、カドミウム、水銀、クロム、臭素などの元素をスクリーニングできますが、すべての有害物質を詳しく判定できるわけではありません。
たとえば、RoHSで規制される六価クロムについては、クロムが検出されたことは確認できても、それが六価クロムであるかどうかまでは、蛍光X線分析だけでは判断できない場合があります。
また、フタル酸エステル類のように、主に炭素や水素から構成される物質は、蛍光X線分析では確認できません。必要に応じて、赤外分光法やガスクロマトグラフなど、別の分析方法を検討します。
そのため、まず蛍光X線で確認できる元素を調べ、結果に応じて追加分析が必要かどうかを判断するという進め方が現実的です。

有害元素が検出された場合の対応
スクリーニングで有害元素が検出された場合でも、すぐに「規制違反」や「使用できない製品」と断定するわけではありません。
蛍光X線で確認しているのは、あくまで元素です。検出の結果だけから、六価クロムやPBB・PBDEといった化学の形態や化合物を直接特定することはできないため、結果の表し方には注意が必要です。
まずは、次の点を確認します。
- どの元素が検出されたのか
- どの部分から検出されたのか
- 検出量はどの程度か
- 製品のどの材料に含まれているのか
- 単一の材料を測定できているか
- 取引先が求める基準値を超える可能性があるか
測定値が基準値に近い場合や、複数の材料が組み合わさっている製品では、対象部分を分けて再測定したり、別の箇所を測定したり、部材ごとに測定したりします。
基準値付近の値が出た場合や、蛍光X線だけでは判定できない場合は、公定法などの精密分析を検討します。必要に応じて、仕入先へ工程や材料の確認を依頼することもあります。
一方、対象元素に大きな懸念が見られなかった場合でも、蛍光X線で確認できない物質や、別途判断が必要な項目が残っていないかを確認します。
蛍光X線分析は、規制への適合を一度で証明する装置ではありません。受け入れの段階で異常や懸念を早めに見つけ、次の確認が必要かどうかを判断するための、第一段階のスクリーニングとして活用できます。
中小企業でも無理なく始められます
有害物質の確認は、大企業だけが行うものではありません。むしろ、専門部署や分析設備を持たない中小企業ほど、取引先から突然確認を求められたときに対応に困ります。
すべての部品を毎回精密に分析する必要はありません。まずは、海外から新しく仕入れた部品、書類が不足している材料、過去に問題があった仕入先の製品など、優先順位の高いものから確認する方法があります。
「すべてを一度に完璧に調べる」のではなく、「まず確認できる範囲から始める」ことで、社内の受入時確認に取り入れやすくなります。
海外調達品の確認でお困りの方へ
にじや分析ラボでは、蛍光X線分析によるRoHS・有害元素のスクリーニング分析に対応しています。海外調達品や部品、材料の確認など、目的に応じた分析をご案内しています。
「仕入先から資料が出てこない」「どの部品から確認すべきか分からない」「海外調達品を受け入れる前に確認したい」という場合でもご相談いただけます。対象の部品や材料、仕入先から受け取った資料、取引先から求められている基準などをご用意のうえ、お問い合わせください。
投稿者プロフィール

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にじや分析ラボ 分析担当
株式会社クリエイティブファクトリー代表取締役。
にじや分析ラボにて、島津製作所 EDX-7200を中心とした蛍光X線分析(XRF)による材料分析・元素分析・材質評価に取り組んでいます。
「材質が分からない」
「仕入れた部品が以前と違う」
「良品と不良品の違いを調べたい」
「めっきや表面処理を確認したい」
「不具合が発生したが、何を調べればよいか分からない」
こうした中小企業・小規模事業者が抱える材料・品質・調達・不具合などの課題に対し、分析を問題解決に活用することを目指しています。
「分析設備と分析担当者を、必要なときだけ。」
社内に高額な分析設備や専任の分析担当者を置くことが難しい企業のための「外部分析室」として、分析方法が決まっていない段階からご相談いただける体制づくりを進めています。
■所属
・株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
・にじや分析ラボ 分析担当
■保有資格
・第一級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店開業
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや分析ラボ開設
■分析・技術分野
・蛍光X線分析(XRF)
・元素分析
・材質評価
・製品・部品の比較分析
・めっき・表面分析
・膜厚分析
・RoHSスクリーニング
・不具合・原因調査
・サイレントチェンジ調査
■主な分析・測定機器
・島津製作所 EDX-7200
・SPECTRO SCOUT
・VANTA Core V2CA
・SIGMASCOPE GOLD B/C
・超音波厚さ計 45MG
・実体顕微鏡/デジタルマイクロスコープ






