突然のRoHS(ローズ)確認依頼にどう対応すればよい?

取引先から突然、「この製品はRoHS対応ですか」と聞かれて、どう答えればよいか分からなくなったことはありませんか。

RoHSという言葉は知っていても、対象となる物質や確認方法、必要な書類まで正確に把握している担当者ばかりではありません。仕入先から資料を取り寄せるべきなのか、自社で分析する必要があるのか、判断に迷うこともあります。

実際にご相談で多いのは、「RoHS対応品として仕入れているが、取引先へ提出できる根拠資料が手元にない」「海外仕入れや古い在庫で、仕入先から最新の証明書や分析データを取得できない」「以前の資料はあるが、現在のロットにも適用できるか分からない」といったケースです。

いずれも、確認する順番を整理しておけば、突然問い合わせを受けても落ち着いて対応できます。まずはRoHSの基本を簡単に理解し、そのうえで「何を確認するのか」を一つずつ整理していきましょう。

RoHSとは何かを簡単に理解する

RoHSとは、電気・電子機器に含まれる特定の有害物質の使用を制限する、EUの規制です。

対象となる物質は、

  • 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)の6物質
  • 後から加わったフタル酸エステル類4物質

合計10物質です。

取引先が確認したいのは、簡単にいえば「製品にこれらの物質が基準値を超えて含まれていないか」という点です。最初から制度の細かな条文をすべて覚える必要はありません。まずは、対象製品と確認が必要な物質を把握することから始めます。

(参考)
・ジェトロ「RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU」
・日本電機工業会「EU RoHS指令」

最初に取引先へ確認すること

RoHS対応を求められたら、いきなり製品全体を調べ始めるのではなく、まず取引先が何を求めているのかを確認します。確認したいのは、主に次の内容です。

  • どの製品や部品が対象なのか
  • 製品全体の確認が必要なのか、特定の部品や材料だけでよいのか
  • 不使用証明書などの書類が必要なのか
  • 分析データの提出まで求められているのか
  • いつまでに回答が必要なのか

たとえば、製品全体が対象だと思っていたところ、実際には内部に使用している一つの部品だけが確認対象だった、ということもあります。

求めているのが書類なのか、分析データなのか、特定の部品・材料だけの確認なのか、製品全体の確認なのか。

ここを整理しないまま調査を始めると、必要のない箇所まで測定することになり、時間や費用が余計にかかります。最初に「何を、どのレベルまで確認すればよいのか」を取引先に聞いておくことが、効率的な対応につながります。

次に仕入先から資料を集める

対象範囲が分かったら、次は部品や材料の仕入先へ確認します。仕入先によっては、次のような資料を持っていることがあります。

  • RoHS不使用証明書
  • 適合証明書
  • 含有物質の分析データ
  • 部品や材料の成分表
  • グリーン調達に関する回答書

すでに仕入先が確認を済ませていれば、自社であらためて分析を行わなくても、書類をもとに取引先へ説明できます。社内に過去の調査記録や、同じ製品について以前提出した資料が残っていないかも確認しましょう。過去の回答書や仕入先とのメールが見つかれば、短時間で対応できます。

ただし、古い資料の場合は、現在の製品や製造ロットにもそのまま適用できるか確認が必要です。製品仕様や仕入先、製造工程が変わっている場合は、最新の情報を取り直します。

資料がない場合は分析を検討する

仕入先から資料が得られない場合や、提出された書類だけでは不安が残る場合は、自社で製品を分析する方法があります。その一つが、蛍光X線分析によるスクリーニングです。スクリーニングとは、対象物質が含まれている可能性があるかを、まず大まかにふるい分ける確認方法です。

蛍光X線分析では、製品を大きく壊さずに、鉛、カドミウム、水銀、クロム、臭素などの元素を確認できます。RoHS対象物質が基準を超えて含まれていないかを、短時間で確認する方法として利用されています。

ひとつ押さえておきたいのは、製品はいくつかの材料でできていることが多い、という点です。

樹脂、金属、はんだ、めっきなど、性質の異なる材料が一つの製品に混ざっている場合、製品全体をまとめて「RoHS対応かどうか」と判断するのではなく、どの部材のどこを測るのかを整理してから測定します。確認したい部材と測定箇所をあらかじめ決めておくと、必要な範囲を過不足なく調べられます。

ここで一つ注意があります。蛍光X線で直接確認しているのは、あくまで元素です。クロム(Cr)が検出されても、それが六価クロムか三価クロムかは蛍光X線だけでは区別できません。臭素(Br)が検出されても、PBBやPBDEそのものを特定することはできません。

そのため、結果は元素のスクリーニングとして評価します。

蛍光X線分析は、RoHS関連の分析方法を定めた国際規格IEC 62321でも採用されています。

(参考)
東京都立産業技術研究センター「RoHS FAQ(スクリーニング分析)」

蛍光X線分析で分かること、分からないこと

蛍光X線分析は便利な方法ですが、すべてのRoHS対象物質を一度に詳しく確認できるわけではありません。鉛、カドミウム、水銀、クロム、臭素などの元素は確認できますが、蛍光X線分析だけでは、六価クロムとして存在しているのか、別の状態のクロムなのかを区別できない場合があります。

また、フタル酸エステル類は炭素や水素を主成分とする物質であるため、蛍光X線分析では確認できません。必要に応じて、赤外分光法やガスクロマトグラフなど、別の分析方法を用います。

(参考)
日本分析機器工業会「RoHS指令規制物質の分析(フタル酸エステル)」

そのため、まず蛍光X線分析で有害元素のスクリーニングを行い、問題がなければ確認を終えるのか、さらに詳細な分析を行うのかを判断します。

「問題なし」と「要精査」で対応が変わります

蛍光X線分析で問題となる元素が検出されなかった場合は、スクリーニングの範囲では大きな懸念がないと判断できます。ただし、分析対象外の物質や、測定だけでは判断できない物質については、別途確認が必要です。

一方、鉛やカドミウムなどが検出された場合は、すぐにRoHS不適合と断定するのではなく、検出量や、部品のどの部分に含まれているのかを確認します。あわせて測定位置や材質、試料の状態も確認し、必要に応じて同じ箇所の再測定や別の箇所の測定を行います。

測定値が基準値に近い場合や、複数の材料が組み合わさっている製品では、対象部分を分けて測り直したり、より詳しい分析を行ったりします。

つまり、スクリーニングは最終判定のためだけでなく、「次に詳しく調べる必要があるか」を判断するための第一段階です。

RoHS対応でお困りの方へ

取引先から突然「RoHS対応ですか」と聞かれた場合でも、まず対象範囲を確認し、次に仕入先の資料を集め、それでも不明な点があれば分析を検討する。この順番で進めれば、慌てずに対応できます。

にじや分析ラボでは、蛍光X線分析による有害元素のスクリーニングを通じて、RoHS対応の確認をお手伝いしています。単に測定値を出すだけでなく、ご依頼の目的、対象となる部材、測定する箇所をうかがったうえで、スクリーニングの結果を整理します。

追加の確認が必要と考えられる場合は、蛍光X線で確認できる範囲と、別の手法による確認が必要な範囲を分けてご案内します。

「取引先から聞かれたものの、何から確認すればよいか分からない」「仕入先から資料が出てこない」「書類の内容を念のため確認したい」という段階でもご相談いただけます。対象製品や部品、仕入先から受け取った資料、仕様書などをご用意のうえ、お問い合わせください。

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投稿者プロフィール

佐々木 英明
佐々木 英明
にじや分析ラボ 分析担当

株式会社クリエイティブファクトリー代表取締役。
にじや分析ラボにて、島津製作所 EDX-7200を中心とした蛍光X線分析(XRF)による材料分析・元素分析・材質評価に取り組んでいます。

「材質が分からない」
「仕入れた部品が以前と違う」
「良品と不良品の違いを調べたい」
「めっきや表面処理を確認したい」
「不具合が発生したが、何を調べればよいか分からない」

こうした中小企業・小規模事業者が抱える材料・品質・調達・不具合などの課題に対し、分析を問題解決に活用することを目指しています。

「分析設備と分析担当者を、必要なときだけ。」

社内に高額な分析設備や専任の分析担当者を置くことが難しい企業のための「外部分析室」として、分析方法が決まっていない段階からご相談いただける体制づくりを進めています。

■所属
・株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
・にじや分析ラボ 分析担当

■保有資格
・第一級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店開業
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや分析ラボ開設

■分析・技術分野
・蛍光X線分析(XRF)
・元素分析
・材質評価
・製品・部品の比較分析
・めっき・表面分析
・膜厚分析
・RoHSスクリーニング
・不具合・原因調査
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