
こんなお困りごとはありませんか
「これまで問題なく使えていた製品のめっきが、ある時から剥がれるようになった」。こうしたご相談をいただくことがあります。仕入先へ相談するときは、発生の状況を整理しておくと、確認したいことを具体的に伝えられます。「剥がれています」とだけ伝えても、どこから調べればよいか、お互いに絞り込みへ時間がかかってしまいます。
この記事では、社内で整理しておきたい情報と、必要に応じて分析で確認できることを順に説明します。
「めっき不良」と決めつける前に
めっきの剥がれは、めっきそのものの品質だけが原因とは限りません。母材の状態、めっき前の処理、使う環境など、いくつかの要素が関わっています。
ひとつの原因に思い込みで飛びついてしまうと、本当の原因を見落としたまま対策を打つことになり、再発につながります。まずは決めつけずに、事実を一つずつ集めることです。
仕入先に連絡する前に、社内で整理したいこと
相談の前に、社内で次の点を確認しておきます。
- 剥がれが出はじめたのは、いつからか
- 特定のロットだけに起きているのか、全体に広がっているのか
- 製品のどの部分(角、平面、こすれる箇所など)で剥がれているのか
- 洗浄方法、組み付け方、保管や使用の環境に、変化はなかったか
この中でまず押さえておきたいのは、①の「いつから発生したか」と②の「特定ロットか全体か」です。発生の境目が分かると、その前後で材料、めっき条件、前処理、仕入先、工程、薬品、設備の条件などに変更がなかったかを追いやすくなります。
そのうえで、③どの部位で剥がれているか、④環境に変化がなかったか、と見ていきます。
使用環境については、以前より温度差の大きい場所で使うようになった、結露しやすくなった、触れる薬品や洗剤の種類が変わった、こすれる頻度が増えた、といった変化が該当します。一見すると小さな変化ですが、記録しておくだけで後の調査で意味を持ちます。
この4点に加えて、
- 正常品(良品)や過去ロットが残っているか
- めっきの仕様(表面めっき・下地めっき・母材・各層の膜厚)
- 図面や仕様書
- めっき処理業者
- 前処理の方法
- 工程変更の有無
なども整理しておくと、調査に役立ちます。とくに、不良品だけでなく正常品を同じ条件で比較できると、原因の候補を絞るための情報が増えます。
これらを整理したうえで相談すると、めっきの仕様や工程について、仕入先からも具体的な情報を出してもらいやすくなります。

めっきは、どういう構造になっているのか
もう少し踏み込んで調べる前に、めっきの構造を整理しておきます。
めっきは、母材(素地)の表面にめっき皮膜が形成されたものです。仕様によっては、母材と表面のめっきの間に下地めっきを設けた、多層の構造になっています。

剥がれについて調べるとき、
- 表面のめっきに何が使われているか
- 厚みがどうなっているか
- 母材や下地との関係はどうか
といった情報は、仕様と照らし合わせるための材料になります。
こうした膜厚の測定には、蛍光X線を用いる方法があります。標準試料を用いることで、非破壊・非接触で微小な部品のめっき厚さを短時間で測定でき、多層めっきの膜厚測定や、めっき層に含まれる元素の特定にも用いられます。
ただし、この測定は品物の条件に左右されます。素地とめっき金属の組み合わせや、層がどのような構成になっているかによって、測定の進め方や結果の読み取り方が変わるためです。そのため、母材やめっきの仕様が分かる資料も、分析の相談時に役立ちます。
(参考)
日立ハイテク「蛍光X線分析法による多層めっきの膜厚測定」
「違い」を確認するという方法
にじや分析ラボでは、めっきや表面処理をされた製品について、表面層、下地、母材との関係、膜厚などを分析・評価する「膜厚・めっき分析」を行っています。めっきの種類や厚みが仕様どおりかを確認したいという目的に対応するサービスで、品質確認や表面処理の確認、仕入先との仕様確認に活用できます。
ここで大事になるのが、比較できる品物があるかどうかです。剥がれた品物だけを見るよりも、問題が出ていない正常品を同じ条件で測る方が、違いの有無や程度をつかむ手がかりになります。
先日も、剥がれの出た製品だけをお持ちいただいたご相談で、正常品と過去ロット品もあわせてお預かりできたことで、「不良品だけに見られる違い」を絞り込めた例がありました。同じ条件で比較測定できると、確認できることが増えます。
正常品と不良品、旧製品と新製品などを同じ条件で測定して、材料や表面処理の違いを比較する「製品・部品比較分析」もご用意しています。剥がれていないころのロットや、同じ仕様の良品が残っていれば、あわせてご相談ください。
また、正常部と異常部、正常品と不具合品を比較し、原因候補につながる情報を整理する「不具合・原因調査」もあります。どの分析が適しているかは、品物の状態と、何を確認したいかによって変わります。

(参考)
にじや分析ラボ「分析サービス」
分析で確認できること、できないこと
試料や測定条件に応じて、元素組成や膜厚などの情報が得られます。これらは、仕様と実物を照らし合わせたり、正常品との違いを確認したりするための材料になります。
一方で、分析結果から確認できる範囲を超えて、製造原因や規格適合、法令適合などを断定するものではありません。測定で違いが確認できても、それだけで剥がれの原因を特定できるとは限りません。
実際、蛍光X線分析だけでは、密着不良の原因そのもの、たとえば脱脂の不足、酸化膜、前処理の条件、めっき浴の管理、熱の履歴、機械的な負荷といったところまでを直接は特定できません。試料が小さい、曲面が強い、測定できる面が狭い、めっきが非常に薄い、多層構造が複雑、母材とめっきの元素が重なる、といった品物では、評価が難しくなります。
そのため、発生時期や工程、使用環境などの情報と照らし合わせ、正常品との比較も組み合わせながら、原因の候補を検討していくことになります。
分析結果を取引先へ説明する必要がある場合は、測定条件や比較データ、所見までをまとめた正式分析報告書をオプションでご用意しています。社内の品質管理や、案件の記録にもご利用いただけます。
何を調べればいいか分からない段階でも
にじや分析ラボでは、分析方法が分からない段階からご相談いただけます。試料の状態と調査の目的をうかがったうえで、必要な分析をご案内します。
めっきの剥がれは、原因の切り分けが難しいトラブルです。まずは発生の状況を整理し、必要に応じて分析で違いを確認する。そうして集めた情報が、仕入先との具体的なやり取りにつながります。
下記のお問い合わせフォームもしくはLINEから、お気軽にお問い合わせください。
投稿者プロフィール

-
にじや分析ラボ 分析担当
株式会社クリエイティブファクトリー代表取締役。
にじや分析ラボにて、島津製作所 EDX-7200を中心とした蛍光X線分析(XRF)による材料分析・元素分析・材質評価に取り組んでいます。
「材質が分からない」
「仕入れた部品が以前と違う」
「良品と不良品の違いを調べたい」
「めっきや表面処理を確認したい」
「不具合が発生したが、何を調べればよいか分からない」
こうした中小企業・小規模事業者が抱える材料・品質・調達・不具合などの課題に対し、分析を問題解決に活用することを目指しています。
「分析設備と分析担当者を、必要なときだけ。」
社内に高額な分析設備や専任の分析担当者を置くことが難しい企業のための「外部分析室」として、分析方法が決まっていない段階からご相談いただける体制づくりを進めています。
■所属
・株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
・にじや分析ラボ 分析担当
■保有資格
・第一級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店開業
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや分析ラボ開設
■分析・技術分野
・蛍光X線分析(XRF)
・元素分析
・材質評価
・製品・部品の比較分析
・めっき・表面分析
・膜厚分析
・RoHSスクリーニング
・不具合・原因調査
・サイレントチェンジ調査
■主な分析・測定機器
・島津製作所 EDX-7200
・SPECTRO SCOUT
・VANTA Core V2CA
・SIGMASCOPE GOLD B/C
・超音波厚さ計 45MG
・実体顕微鏡/デジタルマイクロスコープ






