
製造や品質管理の現場では、完成した製品や納入された部品の一部にだけ、変色や腐食、異物の付着、表面状態の違いなどが見つかることがあります。
外観を確認したり、設備や作業手順を見直したりしても、不良につながる違いが分からず、原因究明の糸口をつかめないこともあると思います。
このようなときは、まず良品や正常部など、比較の基準となるものを定め、材料や表面処理などにどのような差があるのかを整理することから始めます。
この記事では、XRFによる製品・部品の比較で確認できることと、その結果を原因調査にどうつなげるのかを解説します。
こんなお困りごとはありませんか
同じ材料、同じ工程でつくっているはずなのに、一部だけが不良になってしまう。
原因を探ろうとしても、どこから手をつければよいのか分からず、頭を抱えている品質担当の方もいらっしゃると思います。
全部が不良ならまだしも、一部だけとなると、かえって原因がつかみにくいものです。
しかも、原因がはっきりしないまま出荷を止めれば納期に影響し、原因を特定できないまま出荷を続ければ不良の再発につながるおそれがあります。
そんな板挟みの状況は、製造の現場でよく起こります。
なぜ「一部だけ不良」は難しいのか
全部が不良であれば、材料や工程のどこかに共通の原因があると考えやすいのですが、一部だけとなると話は複雑になります。
材料のわずかなばらつき、工程のちょっとした変化、保管環境の違いなど、考えられる要因がいくつも重なっている可能性があるからです。
ひとつの原因に思い込みで絞ってしまうと、対策が的外れになり、不良が再び出てしまうこともあります。
まずは思い込みを一度脇に置いて、事実を集めるところから始めることが大切です。
まず社内で整理しておきたいこと
原因を探る前に、状況を整理しておくと手がかりが見つけやすくなります。
- 不良が出たのは特定のロットや時期に偏っていないか。
- 使った材料の仕入先やロットは同じか。
- 不良品と良品を、混ざらないように分けて保管できているか。
こうした情報が、あとの比較で大きく役に立ちます。

私たちが実際にご相談を受けていて特に感じるのは、比較用の良品が残っているかどうかで、調査の進めやすさがかなり変わるということです。
良品が手元にあれば、不良品とできるだけ同じ箇所を同じ条件で測定し、不良品だけに出ている元素や、特定の元素の増減といった差を、そのまま見比べられます。
一方、良品がない場合は、同じ製品の正常な部分、別ロットの製品、過去に使っていた品、材料の規格値などを基準にすることになります。
比較の材料はいくつもありますので、良品がないからといってあきらめる必要はありません。ただし、製造時期やロット、表面状態などの条件の違いも一緒に考える必要があり、良品と直接比べる場合よりも評価の難しさは上がります。
ですから、不具合が出たときは、不良品だけでなく正常な良品も、できるだけ捨てずに残しておいていただくようお願いしています。「不良品はすぐ捨ててしまった」「良品と混ざってしまった」となると、比較そのものが難しくなってしまうからです。
良品と不良品を「比べて」調べる
原因を探るうえで有効なのが、良品と不良品を比較するという考え方です。
両方の同じ部分を、できる限り同じ条件で測定し、含まれている元素の組成やスペクトルに違いがないかを見ていきます。
「良品では検出されなかった元素が不良品から検出される」あるいは「本来あるはずの元素が不良品では少ない」といった差が見つかれば、それが原因を考える手がかりになります。

比較できる良品や基準が残っていることは、調査では大きな強みになります。
何と比べるかがはっきりしていると、わずかな違いにも気づきやすくなるからです。
たとえば、こんな違いが手がかりになります
具体的には、たとえば不良品の測定面にだけ、本来は使っていないはずの元素が見つかることがあります。
その場合は、材料・工程・保管・使用環境などのどこかで、別の物質が付着した可能性が考えられます。
逆に、めっきや表面処理に関係する元素の検出傾向が良品と異なれば、表面処理層や下地の違いを検討する手がかりになります。
見た目だけでは分からない差でも、元素の組成で見ると、不良品だけで特定の元素が増えている、本来あるはずの元素が少ない、合金の組成の傾向そのものが違う、といった形で表れることがあります。
こうした「違い」が見えてくれば、次にどの工程や条件を見直せばよいか、当たりをつけやすくなります。
原因そのものをずばり言い当てるというより、疑うべき方向を絞り込むための材料が得られる、とお考えください。
実際に測ってみると、こんな違いが出ます
にじや分析ラボでは、実際に測定した分析データを公開しています。
たとえば、同じ種類の稲100円銀貨で、金属光沢が残っている品と、黒ずんでしまった品を、それぞれ3箇所ずつ比較しました。
その結果、黒ずんだ品では硫黄(S)が多く検出されました。
3点平均では、光沢品の硫黄が0.367%だったのに対し、黒ずみ品は5.165%と、複数の箇所で共通して増えていました。

これは、黒ずみの原因を検討するうえでの手がかりになります。
ただし、蛍光X線分析(XRF)で分かるのは硫黄という元素が多いことまでで、その硫黄がどのような化合物なのか、どこから付いたのかまでを、この結果だけで断定するものではありません。
違いを確認したうえで、測定箇所や比較対象、付着物、発生状況などを組み合わせて原因候補を整理していくのが、次のステップになります。
(参考・参照)
にじや分析ラボ「分析結果(実測データ)No.007」
製品同士の組成を比較した実測例もあります
外観・用途が似た2つの製品を同じ条件で測定し、主要元素(Ni・Fe・Cr)の組成傾向に違いがあることを確認した実測データ(No.004)も公開しています。 ただし、測定面は表面処理層などの影響を受ける場合があるため、この結果だけで母材の違いを断定はしていません。
小さな部分もねらって調べられます
不良は、部品全体ではなく、ごく一部の小さな範囲で起きていることもあります。
蛍光X線分析では、X線を当てる範囲を細かく絞ることができます。
装置メーカーの島津製作所は、微小な異物の分析や不良解析では、X線を最小φ1mmまで絞って測定できると説明しています。
にじや分析ラボでも、先ほどの光沢品と黒ずみ品を比べた実測データ(No.007)で、分析径1mmによる測定を行っています。
気になる一点をねらって、その周囲との違いを、できる限り同じ条件で比べられるため、「ここだけおかしい」という不良の手がかり探しに役立ちます。

(参考・参照)
島津製作所「EDX-7200 特長」
分析はあくまで「手がかり」です
ここで大切なのは、XRFで確認できるのは主に元素組成やその違いであり、それがそのまま「原因の断定」になるわけではないという点です。
見つかった違いをきっかけに、工程や材料、保管や使用環境などのどこを見直すかを考えていきます。
分析は、その手がかりを客観的なデータとして示す役割を担うものだとお考えください。
データと現場の知見を組み合わせることで、原因の候補を一つずつ絞り込んでいけます。
「違いの確認」と「原因の調査」
にじや分析ラボでは、目的に応じてサービスを分けています。

なお、XRFでは確認できない情報が必要な場合は、別の分析方法や追加調査が必要になることがあります。
どちらが適しているかは、お困りの内容によって変わります。
「まず違いだけ確認したい」のか、「原因候補まで整理したい」のか、目的をお聞きしたうえでご案内します。下記のお問い合わせフォームもしくはLINEから、お気軽にお問い合わせください。
投稿者プロフィール

-
にじや分析ラボ 分析担当
株式会社クリエイティブファクトリー代表取締役。
にじや分析ラボにて、島津製作所 EDX-7200を中心とした蛍光X線分析(XRF)による材料分析・元素分析・材質評価に取り組んでいます。
「材質が分からない」
「仕入れた部品が以前と違う」
「良品と不良品の違いを調べたい」
「めっきや表面処理を確認したい」
「不具合が発生したが、何を調べればよいか分からない」
こうした中小企業・小規模事業者が抱える材料・品質・調達・不具合などの課題に対し、分析を問題解決に活用することを目指しています。
「分析設備と分析担当者を、必要なときだけ。」
社内に高額な分析設備や専任の分析担当者を置くことが難しい企業のための「外部分析室」として、分析方法が決まっていない段階からご相談いただける体制づくりを進めています。
■所属
・株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
・にじや分析ラボ 分析担当
■保有資格
・第一級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店開業
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや分析ラボ開設
■分析・技術分野
・蛍光X線分析(XRF)
・元素分析
・材質評価
・製品・部品の比較分析
・めっき・表面分析
・膜厚分析
・RoHSスクリーニング
・不具合・原因調査
・サイレントチェンジ調査
■主な分析・測定機器
・島津製作所 EDX-7200
・SPECTRO SCOUT
・VANTA Core V2CA
・SIGMASCOPE GOLD B/C
・超音波厚さ計 45MG
・実体顕微鏡/デジタルマイクロスコープ






